よく遊び よく遊べ

2013/09/02

IMG_0076この夏は、よく遊んだ。

正確には、今年の夏「も」かもしれないけれど。

 

脚がある程度よくなり、ギプスがとれ

まあまあ歩けるようになったのが夏になる前のこと。

いまとなっては、ギプスから解放されたのがいつのことだったか

わすれてしまうくらい「昔」のことのように感じる。

 

夏がはじまってすこししたとき

「この夏は遊ぼう」と、何やら、決心めいた思いを抱いた。

ずっと遊んでいるように見えても、

実のところ「いいのかな?」と思ったり

仕事のことが気にかかったりしていた。

もう、ずいぶん、長いあいだそうだった。

もしかしたら、大人は、みんな、そうなのかもしれない。

つぎのことが頭をよぎってしまう・・・。

けれど、脚をケガして、病院の先生から「骨がつくまで3か月」と言われたこともあり、

その間は「休もう」と思っていた。

ギプス期間は、約2か月。

残りの1か月は、堂々と「休める」。

休みが、遊びに変わっても構わない。

そもそも、あれこれ言う人もいないのだ。

 

と、言うことで「この夏は遊ぼう」と思った。

すると、不思議なことに、遊びのさそいがつづいた。

そんなものなのかもしれない。

決めてしまうと動きだす・・・ということ。

 

わたしのなかの「遊び」というのは、主に、海、川、山。

 

何をするというわけではないのだけれど、

そういった場所に行き、その場の空気のなかに身を置くというのが

からだとこころのなかにある何かを再生してくれる気がする。

その感覚は、若いときにはあまり感じなかった。

若いころは「再生」されなくても、だいじょうぶだからかもしれない。

もしかしたら、からだやこころと向き合う時間を経て

そういった感覚に気づくようになったのかもしれない。

例外がひとつだけある。

はじめてハワイに行った二十代の終わりのとき「再生」を感じたことがある。

ハワイがわたしにとって、特別な場所になったのは、その感覚があったからだ。

 

この夏は、徳島の海と川、香川の海に行った。

 

香川の海は、湖のようにしずかだ。瀬戸内は、葉山の海以上に波がない。

黄色い砂にやさしい色の海。遠くに通りすきでいく船。

大型のタンカーを目にすることもある。

 

徳島の海は、太平洋らしい海。

海らしい海の風景が、目の前に広がる。

高知側に行くにつれ、おどろくほど水が澄んでくる。

海に注ぎこむ川の水もきれいで、その色におどろく。

川の透明度で言えば、徳島の川はいままで行ったなかでも一番かもしれない。

この夏、ともだちがつれて行ってくれたところは

泳いでいると「飛んでいる」ような気持ちになるほどだった。

空気のように澄んでいる。

からだに触れる水もそれほど冷たくなく、幾度となく流れにからだを乗せた。

見上げると、青い空と樹々のみど、降り注ぐセミの声、笑うこどもたち。

ずっと昔、こうやって心地よく遊んでいたときのことを思う。

思うたび、自分のなかにある「源」のようなものが

コツンとちいさな音を立てる。

 

わたしたちは、大人になるに連れ、ずいぶんといろいろなものを身につけてしまう。

いい場合もあるけれど、そうでないときもあるだろう。

大人としている自分と、本来の自分の間できる、ほんのすこしの隔たり。すきま。

澄んだ水に浸かると、その、すきまが充たされていくように感じる。

その感じは、外にだしてしまうとわたしの場合

「たのしい」という言葉になるのだけれど、

夜、家に帰り着き、眠りにつくほんの短い間に「降りていった」と感じることもある。

時間がさかのぼっていく。こども時代を通りこして・・・。

「降りていく」感じは「もどっていく」でもあり、

「思い出す」と、感じるときもある。

「再生」。

どちらにしても、見失ったパズルがひょんなところから出てきて、うわっとなり、

あるべき場所にはめこみ、安心してゆっくり眠りに落ちていく、のだ。

でも、大抵の場合、遊びつかれ、深く思いをめぐらす前に

「まあ、いいか。たのしかったから」ということになるのだけれど。

 

ときどき、葉山を思い出す。

夏の一色海岸の夕空やそこに集う人たちの持つ空気感を思い出すと泣きたくなる。

あんな場所は、そう、ないのだ。

たのしいことを知っている人たちが、たくさんいるところ。

けれど、四国の海や川や山は、その思いを超えるほどゆたかなことも知った。

すきな場所がふえていくのは、うれしい。

すきな人がひろがっていくのも、うれしい。

 

たくさん遊んだ夏が終わった。

そして、秋は、ある朝、突然、おとずれる。

わたしの遊びは、そのまま、つづく。

もともと、時間には境界線がないのだから・・・。

 


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