天のしずく

2013/02/04

年が明けた半ば、3か月ぶりに東京・葉山にもどった。

たった3か月だけれど、その3か月はずいぶんと長く感じた3か月だった。

 

帰った理由は、代官山蔦屋書店での新刊のトークイベントのため。

あたらしい本のもうひとりの著者、藤田一照さんと話をした。

蔦屋書店は「すごい」と聞いていたけれど、確かにすごいところだった。

「何がすごいか」は、ぜひ、行って体験してみてください。

わたしは、編集の方との待ち合わせ3時間前にお店に着いた。

そのくらいの時間があれば、店内をすべてまわれる、と思ったからだ。

けれど、結果的には、まわり切れなかった。

あそこの棚で止まり、ここの棚で止まり。

そんな感じで本を手にとり、選んでいたら、3時間はあっという間にすぎてしまった。

 

一照さんとのトークについては、

松浦裕さん(アフタヌーンティーの連載担当編集者であり「つむぎや」という

料理ユニットをやられている方)が

まとめてくれたものがあるので、あとでアップします。

とてもいい話をしてくださった・・・ということは確かです。

 

東京滞在は2日で、あとは葉山にいた。

葉山滞在中に観ておきたかった映画がある。

『天のしずく』。辰巳芳子先生の映画だ。

 

辰巳先生は鎌倉にお住まいで、2回ほど町でお見かけしたことがある。

白い髪を結いあげ、はっとするきれいな色の服を着られていた。

観光客の人混みのなかでも「あ、辰巳先生」とすぐわかった。

 

辰巳先生は「いのちのスープ」をつくられている。

そのスープをつくりはじめた経緯、思いから

食べ物、いのち、と、辰巳先生を軸に物語が広がっていく。

日本の美しい風景、鎌倉の四季、台所でくり返される営み、集う人たち・・・。

いのちとは・・・。愛とは・・・・。

わたしは、最初から涙があふれつづけた。

上映時間の100分はあっという間にすぎ

見終わったとき「このつづきを観たい」と思った。

思いがけず、映画のなかには瀬戸内の物語もあった。

その光景にも涙があふれた。

 

葉山にいるときに、この映画を・・・と思ったのは

四国では上映予定がないからだ。

葉山にいたとき、逗子のシネマアミーゴでちょうど上映されていた。

やはり、評判のようで、わたしが行った平日の午前中の回も何人もの人が来ていた。

週末は、店の前にならんでいるらしい。

 

また、どこかで、この映画を観たい。

いのちが響き合う・・・ということを確かめたいとき、思い出したいとき。

「わたしは何者か」を思うとき・・・。

 

最後にフライヤーに掲載されている辰巳先生の言葉を。

「昨今のうたい文句『簡単即席』に

人間が生命をまっとうする真実があるでしょうか。

食ということは、あまりにも当たり前のことなので

つい日常茶飯の扱いになります。

でも、ほんとうを申しますと日常茶飯ほど、これなくしてはやれない、

生きていかれないことが多いのです。

料理は、本当に食の一端でございますが、ですけれどその小さな一端にありながら

生きていく全体に対して一つの影響を及ぼしてまいります。

食べごこちを作っていくということは、最も基本的な自由の行使。

そして料理を作る事は、自然を掌中で扱うことなのです。

それは人間にのみ許された厳粛な行為だと思います」。

 

今日は立春。ひかりの季節の到来。

 

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